夜は短し 歩けよ乙女

森見登美彦  角川書店  2006

お噂はかねがね、だった本。一読して、評判の高さに納得。

舞台は京都。
たぶん、成績はいいだろうが、女の子と遊ぶとか洒落た会話をするとかは苦手、という理系の大学生。
所属クラブの後輩にあたる黒髪の乙女に一目ぼれをした。なんとか、こちらに目をむけてほしい。自分の存在に気がつき、そのうえ、あら、いい方ね、と認識してほしい。

くだんの黒髪の乙女は、まったくの天然自然なふるまい。
なのに? だからこそ? 行くところ行くところで珍妙な人たちと出会い、なおかつ不可思議な事件に巻き込まれる。
なんせ、竜巻は起こるわ、電飾つき三階建て電車は走るわ、天狗は跳ぶわ、美少年の本の神様はあらわれるわ・・・
しかし、この乙女、どこまでも純真無垢。
飄々として、眼前のできごとを楽しみ、受け入れ、酒の飲み比べにも挑んでしまう。

その乙女の行動半径になんとか入ろうと、青年は苦心惨憺四苦八苦してのた打ち回る。
ようやく、出会えても、乙女の口からは「あら、先輩、奇遇ですね」

乙女は美酒を口にふくんで「なむなむ」
であった人々の幸せをねがって「なむなむ」

青年と乙女、それぞれの側からの描写がくりかえされながら、物語は展開していく。
ものすごーく、ひらたく言ってしまえば、大学生と後輩の、顔見知り程度からデートにこぎつけるまでの一年間。なのだが、なんといっても、この本の特色は、それぞれの語り口。独特の文体。
これまでになかった味だ。
そして、事件の奇想天外さ。
どこへつながるのか予想がつかない面白さ(最終章は、さすがに予定調和とわかるが)
登場人物(脇役もふくめて)の魅力。

新種の青春もの。発見!

夜は短し歩けよ乙女夜は短し歩けよ乙女
(2006/11/29)
森見 登美彦

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調和と不調和

昼、娘と街中に出る。
駅前で、○翼の街宣車が、なにかがなっていた。
信州でのできごとに呼応してデモンストレーションだろうか。

初めての店でランチをとる。
路地をはいったところ、古いしもた屋を改築した和風の店構えだが、フレンチ。
式台で靴をぬぎ、黒光りした階段をのぼる。
ランチコースも松・竹・梅、一番安い松を選ぶ。
前菜。ポタージュスープ。メインディッシュ。ご飯・・・すべて美濃焼きふうの陶器のお皿。お箸。木のスプーン。
いいなあ。和とフレンチのコラボ。とても調和がとれている。
本場のフレンチシェフがみたら、怒るだろうか。
いや、こういうのもアリだね。と、うなずくに違いない。
だって、フレンチの食文化を尊敬し、尊重しつつ、日本文化と融合させているのだから。

朝からのTV画面。
旗がうちふられ、怒号がとびかうイベント・・・・不調和だ。
そこには、尊敬がない。


しかし青服を二人に限って、そのまわりを白服で固めたのは見事なフォーメイションだった。
ご苦労サンでした。
でも、やっぱり、異常な光景。

大いなる陰謀

まず、言っておく。邦題がイケナイ。

監督・製作・教授 : ロバート・レッドフォード
上院議員 アーヴィング :  トム・クルーズ
TVジャーナリスト ロス : メリル・ストリープ
という重厚な顔ぶれ。

早朝、学生が、教授に呼び出される。
なぜ、君ほど優秀な学生が、学習意欲を失ったのか・・・
教授は、ふてくされた学生を説得する。
そういう無関心が、君が批判するオトナ・体制側をますます肥大化させている。
声をあげなくては。立ち上がらなくては、なにも変わらない。と。

午前10時。ベテランジャーナリストが、共和党上院議員の独占インタビューに呼び出される。
アフガンでの新しい作戦をリークしようとする議員に、ジャーナリストは、鋭い質問を浴びせる。
イラクでの過ちは、そして、ベトナム・・・での過ちからなにを学んだのか。
上層部のあやまった判断で、勇敢な兵士の命が失われていいのか。
(原題 Lions for Rams は、ドイツから見たイギリス軍をあらわした詩による)
次期リーダーの地位をうかがう議員は、彼なりの信念を持っている。
なぜ、マスコミは政府批判ばかりで真実を伝えてないのか。
9・11のあと、イラク侵攻をマスコミはこぞって賛成したではないか。
みなが問われている。テロに対して Yes なのか No なのか。

そのころすでに、アフガンでは、高地に精鋭部隊をヘリで運び前線基地を作るという作戦が実行されていた。
そこには、教授のゼミを受けた黒人とメキシコ人の教え子がいた。
二人は、いまの世の中を変えるために、ぼくたちにできることは?! を真剣に考えたうえで、志願兵となったのだ。
しかし、ヘリはアフガン非政府軍の攻撃を受け・・・・

議員×ジャーナリスト
教授×学生
二組の、真剣な、ある意味バーチャルではあるが、本質論ともいえるディベートに重ねるように、戦場の現実がかぶせられていく。

ラストシーン。
教授との話し合い後、なにかしら変化を感じつつある学生の表情。
目の前のTVは、あいかわらず、くだらない番組。
その下にテロップが流れる
「アフガニスタンに新たな作戦遂行。高地に精鋭部隊投入。作戦は成功・・・・」


うわあ。重いよ、むずかしいよ、厳しいよ。
どっちかが○で、どっちかが×とは言い切れない。

志願した学生が、黒人とメキシコ人というのも、つらい。
無事、帰還できれば、学籍復帰できる。しかも、授業料免除で。

ジャーナリストも、理想と現実のはざまにいる。
教授の人生も、若い頃の夢や理想どおりにはいってない。
士官学校を最優秀で卒業した議員は、情報部に配備されるため、実戦経験は皆無だ。

さあ、君ならどうする?!
と突きつけられたところで、唐突に映画は終わる。
見た人が一人ひとり考えなくてはならない。
という、ロバート・レッドフォードの思いが、ものすごく詰まった映画。


しかし、なあ、この学生・・・どう答えを出すだろう。
なんか、この子も志願しそうで、こわい。教授は、けして、そんなことを望んではいないのだが。

プルーと満月のむこう

たからしげる   あかね書房  2008

祐太はときどき、不思議な鳥の声が聞こえる。
ぐーるる という鳥のさえずりのむこうに、意味がある声。
それは、祐太が生まれる前になくなった父の声。

友人の一騎がセキセイインコを飼い始めた。以前、祐太の家で飼っていたのと同じ、プルーとなづけて。
祐太にだけわかる。プルーの発する言葉が。
それは、父なのか、それとも、プルー自身の声なのか・・・・

<いわなければ、わからない。だまっていても、始まらない>

祐太はある決意をする。
そして、母さんも。

『落ちてきた時間』のシュールさと比べれば、おさまりのいい終わり方という感があるが、透明感のある筆致で、自分を主張できない少年が一歩をふみだすまでを描いた物語。

プルーと満月のむこう (スプラッシュ・ストーリーズ (3))プルーと満月のむこう (スプラッシュ・ストーリーズ (3))
(2008/03)
たから しげる、高山 ケンタ 他

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うわさの雨少年(レインボーイ)

宮下恵茉 ポプラ社  2008

ぼくの名は青野晴。
名前と反対に、運動など楽しみにしていイベントの日は、必ず雨がふる。
おかげで、ぼくは雨男というありがたくないレッテルを貼られてしまった。
ひいじいちゃんの法事に行くときも、雨。
別に楽しみにしていたわけじゃないのに。
しかも、ひいじいちゃんの遺族、つまり、父さんの親戚たちはへんてこな人ばかり。
おまけに、なんだかへんてこなばけもの?も出てくるし。
たいくつしたぼくは、雨の中を散歩にでかけた。
そこで出あった少年と、明日、キャッチボールをしようと約束をする。

当日は、大雨。しかもぼくのグローブが見当たらない。
でも、父さんは昔から強く言う。
「約束はぜったい!守らなくちゃいけない」と。

ユーモラスな筆致で楽しく読みながら、読後、約束を守ることの大切さ、友情、命の重み・・・をじんわり感じさせる。

うわさの雨少年 (ポプラ物語館 13)うわさの雨少年 (ポプラ物語館 13)
(2008/03)
宮下 恵茉

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読書記録

あいかわらず、旧ブログにはログインできません。
旧ブログに書いていた本感想は、トップページ『読書記録』に整理、移行しました。
いちど整理しなくては・・・と思ってはいたのですが。
はー。やれやれ。

その他の記事は、まあ、保存するほどのこともないので、そのまま放置しておきます。

少しずつカイゼン

Mac利用の方からご指摘がありましたので、タイトルを「ちょこちょこ日記・その二」に変えてみました。
これで、どうでしょう?
お使いの機種によって文字化けや、コメントができない、などありましたらご連絡ください。
コメント欄は、ここでも認証制になっていますが、 いち に サン などの文字を数字におきかえる、というものです。

ところで、同じサーバーのブログに書き込みに伺ったのですが、なぜか、認証されなくて・・・
なぜだ?!

行き来させていただいているサイトにも、まだ、なかなか伺えなくてすいません。
勝手なお願いですが、ここを見てお気がつかれた方、リンクの張替え、よろしくお願いします。

石の猿

ジェフリー・ディーヴァー作  池田真紀子訳   文春文庫  2007

おなじみリンカーン、ライムシリーズ。
中国からの密入国を斡旋する蛇頭の中でもゴーストと呼ばれる男は、世界でもっとも危険な邪悪な人物として国際指名手配されている。
しかし、ゴーストは度重なる犯罪を犯しているのに、顔写真も指紋も、なにも足跡を残していない。
顔や声を知っている者もいない。

リンカーンの頭脳によってゴーストが乗った船を特定したNY市警は、先回りして着岸を待ち構えていた。
しかし、思わぬ大嵐で船は転覆。
あろうことか、ゴーストは移民たちを船倉に閉じ込め、爆破した。
船倉からなんとか脱出できたのは、病身の父、妻と二人の息子、そして、他の家族から赤ん坊を預かった、チャン一家。
妻、娘を抱えるウー一家。
そして、漢方医であるジョン・ソン。
しかも、かろうじて岸にたどりついた彼らを、ゴーストはなお、銃撃しようとする。

彼らは密入国者。見つかれば、強制送還される。
しかも、国では反体制派。政治犯として、どんな扱いを受けるか・・・・
なんとしても、アメリカの警察からは逃れなければならない。
しかも、ゴーストの追及、報復からも逃れなければならない。

リンカーン・ライムとアメリア・サックス、そして仲間たちは、地下に隠れた移民をさがしだし、無事、保護できるのか。
姿の見えない、極悪非道なゴーストを追いつめ、身柄確保できるのか。
法と正義の裁きを受けさせることができるのか。

何作か読んできたので、わりと早い段階で、犯人(ゴースト)はわかった。
なので、ゴースト逮捕の瞬間は、それほど驚きはなかった。
この作品のキモは、犯人さがしというより、中国系アメリカ人刑事、そして、ゴーストを追うため移民にまぎれて密入国船に乗った中国公安局刑事、この二人がもたらす異文化交流。
アメリカ人からは荒唐無稽な、奇想天外な発想や、独特の風習、伝統的な信仰、儒教的思想などなどが、見えないゴーストを追う手がかりになっていく。
呆れたり、驚いたり、好奇心を抱いたり、そして、格言や思想を自分なりに解釈するうち、自分の生き方にある変化をもたらされていく、その過程が、中国文化にやや近い位置にいる日本人として、とても興味深い。

さらに、登場する中国人それぞれに、命を賭けてまでして自国を捨てざるを得ない事情がある。
文化大革命の爪あと。天安門事件の記憶。自由にものが言えない生活。
親と子の世代の違い。
そして、ゴーストに雇われる少数民族への、見下した態度。
とくに、少数民族問題がクローズアップされている、いま、このとき、いろいろなことを考えさせられる。

たしかに、アメリカにも、そして日本にも、いろいろな問題がある。
しかし、こうして自由に出版でき、自由に人が行き来でき発言ができるありがたさを、あらためて感じる。
思想をしばる、人をしばる体制は、やはり間違っている。
わが国も、中国との経済関係重視は理解できないでもないが、もう少し、毅然とした態度ができないものか。。。。

なんて、読書感想とはちがうほうへ意識が向かってしまった・・・・


ちなみに「石の猿」とは孫悟空のこと。

石の猿 上 (1) (文春文庫 テ 11-11)石の猿 上 (1) (文春文庫 テ 11-11)
(2007/11)
ジェフリー・ディーヴァー

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石の猿 下 (3) (文春文庫 テ 11-12)石の猿 下 (3) (文春文庫 テ 11-12)
(2007/11)
ジェフリー・ディーヴァー

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引越し

新居に引越ししました。
こんな感じでどうでしょう?


設定をいろいろいじれば、旧ブログの引越しもできるようですが、ちょっとよくわからないので、当分並行しておいておきます。
旧ブログの保存しておきたい記事については、少しずつHPの方に移行させるつもりです。
もう少しなれてきたら、リンクの移動など、お手数ですが、よろしくお願いします。

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